ともみろぐ

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震災後に捨て犬が増えた事情とは?シーズーの帰巣本能に涙

放浪犬だったビーグルのカレンが我が家の家族になったすぐ後、夏の炎天下の公園で小さなシーズーが繋がれて捨てられていました。

阪神・淡路大震災の後に出会った保護犬シーズーちゃんにもいろんな出来事がありました。

ペットたちを「くん」「ちゃん」付けにしております。人間の子であれば我が子なのにお恥ずかしいことだと思いますが、ペットたちの場合は愛称として捉えていただきたくお許しください。

公園に繋がれっぱなしで放置されていた小さなシーズー

1995年の真夏の暑い日、わたしの母は用があって隣町の公園を通りかかった時、公園の樹々を支える支柱に繋がれたシーズーを見つけました。

日陰でもない炎天下でシーズーはじっとお座りをしていたそうです。

飼い主さんが何かの用事でその場を離れているのかどうか、母はしばらく近くから様子を見ていたそうですが、なかなか戻ってこないことで、だんだんシーズーのカラダが心配になり近付いたのです。

するとリードと一緒に樹の支柱にぶら下げられていた袋の中は、そのシーズーのう◯ちでした。

不思議に思いつつもシーズーを日陰に移し、母は一緒に飼い主の帰りを待っていました。

しかし随分と時間が経っても飼い主は戻って来ません。

とても暑い日だったので、シーズーの体力も限界だと判断した母はとりあえず連れて帰り、水やフードを与え、カラダを冷やし休ませました。

シーズーの首輪には鑑札がついていたので、母は保健所へ連絡をとり飼い主を調べました。

今の時代は個人情報法などの関係で、どういう対応をされるのか分かりませんが、当時は飼い主の連絡先が判明し、母が電話をかけてみました。

するとかなり高齢の男性が電話に出たのです。

いきさつを説明した母に男性は「おお!良かった良かった!そちらで飼って欲しい」と言うのです。

男性に事情を聞くと

「大地震で被災し、今まで住んでいた地元から遠く離れた仮設住宅に入っている。このたびようやく抽選で当たった集合住宅には犬は連れて行けないので、誰か新しい飼い主になってくれないかと公園に繋いでおいた」

そう告げられた母は驚きのあまり、何も言えなかったそうです。

今までシーズーは可愛がられていたのだろうかという疑問

家でそんな事になっているとは何も知らないまま、当時徒歩1分ほどの近所に住んでいたわたしは、毎日の日課であるワンコたちのお散歩のために実家に向かいました。

その時はわたしが先日保護し、まだ体調が回復していないビーグルのカレンのことで頭がいっぱいだったのです。

カレンのエピソードはこちらです。

tomomilog.hatenablog.com

ところが家に入ると、真っ先にリビングのソファでくつろぐシーズーが目に入ったんです!

「ええーっ!?あの?あなた、どちら様???」と尋ねました。

わたしは一瞬、近所のコを預かっているのかと思ったのです。

抱き上げてみるとそのシーズー女の子で、毛はボソボソだけど、顔が愛らしくてとても可愛い。

すると母から事情を聞いて涙、涙、涙!

シーズーは鑑札をしていたお陰で年齢がはっきりわかり、とっくに成犬になっていました。

でも抱きかかえた感じではシーズーの成犬の平均体重である5〜8kgには全く届いておらず、骨が浮いてガリガリ

体重計で測ってみると、やはりかなり少なく2kgしかありませんでした。

体毛もパサパサでところどころ皮膚病のようになり毛が薄くなっています。

飼い主が被災されたという事情から、食事はあまり与えてもらっていなかったのか?と疑問に思いました。

でも鑑札をつけてもらっていたのは愛情があったと信じたい。

そんな複雑な思いでした。

父の鶴の一言で家族になった

コウジくんもマイちゃんには優しい態度

その日の夜、父が仕事から帰ってくるとやはりかなり驚いたようです。

つい先日カレンを連れて帰ってきた娘(わたし)に続き、一週間もしないうちに次は妻がシーズーを連れて帰って来たのです。

驚きつつも小さくて可愛い女の子を早速抱いていた父。

シーズーも父にべったり懐いていて膝の上から離れませんでした。

母は「すぐに新しい里親を探すから、それまでの間......。」と言いかけた時、父は

「3匹も4匹も一緒や!」

と、そのシーズーを家族にする意思を全面に出したのです!

「えええええ〜!?いいの!?」な状態の母。

その日からそのコは我が家の一員となりました。

先住犬であったコウジくんもダイちゃんもまた家族が増えてびっくりだったでしょうが、女の子には優しい男の子たちだったので、全く問題ありませんでした。

でも「お弁当を作るのに一人分も二人分も一緒」というのとは全く違って、みんなそれぞれに存在感が大きい大きい!

なのでお世話する大変さは倍増ですが、一緒にいられる幸せも倍増するのですね。

その後カレンとは女同士のライバル意識が働いていたようですが......。

この辺りのおもしろエピソードはまたいずれコミックエッセイにしたいなと思っています。

いつでも写真や動画を撮れる今の時代なら、たくさんの記録が残っていて、すぐにSNSに載せたりできたのでしょう。(残念!)

昔ハンディカムで撮った動画テープは大切に置いてあるのですが、再生機がもう手元にないので、何かと問題がありますね。

ところが数日後の行動で複雑な心境に

我が家の家族になったシーズーは「マイちゃん」と名付けました。

マイちゃんは病院で検査をしてもらい、美容院に行くとさらに可愛くなり、元気になって日に日に太っていきました。

お散歩はいつもは母とわたしで1人2ワンコずつ一緒に連れて行っていたのですが、なぜか毎回マイちゃんは行きたい方向があるようで、そちらに引っ張ろうとするのです。

ある日の夜、お散歩には母とわたしと、そして当時のわたしの主人も一緒だったので、男の人が一緒の心強さから一度マイちゃんの行きたい方向へ行ってみようかと、試しにマイちゃんの行く方向について行ってみました。

我が家のワンコの中で1番小さなカラダで一生懸命リードを引っ張りながら前へ前へ歩くマイちゃん。

トコトコ、トコトコ坂道をどんどん登っていきます。

いつもは行かない方向へ、わたしも歩いたことのない道を進んでいきます。

どこにそんな体力があるのだろうと思うくらい力強く、意気揚々と歩く姿になんとなくこの先に着く場所の予想はついていました。

15分ほど歩いた先には被災者の方たちが住む仮設住宅が見えて来ました。

広い敷地内に同じ建物がズラッと並ぶ中、更に奥へ奥へと入っていきます。

もし次の機会にわたし一人で自力で辿り着こうと思っても、わたしには到底無理だと思えるほど入り組んだ先で、マイちゃんの歩みはピタッと止まったのです。

マイちゃんの目線の先には仮設住宅の中の一戸の建物でした。

扉の外には家族数2〜3人分の靴が並んでいました。

そしておそらく今までのマイちゃんの小屋であったであろう段ボールが外に置かれていたのです。

マイちゃんは中から誰かが出て来てくれることを、尻尾を振ってひたすらに待っているようでした。

それはほんの数分だったと思うのですが、マイちゃんの『元の飼い主を思う気持ち』に泣けて泣けて、涙が溢れて止まりませんでした。

でも今、元の飼い主と対面しても先方は困るでしょうし、マイちゃんだって二度も悲しい別れを経験しなければならなくなります。

一緒に来ていたコウジくんもダイちゃんもカレンちゃんも、みんな息を潜めておとなしくジッと待ってくれていました。

誰も「早く帰ろうよ〜」と催促しなかったのが不思議です。

みんなわかっていたんだろうなと思うのです。

そして仮設住宅の中のひとたちも気づいていたと思います。

大人3人と4匹の犬の団体で、夜に仮設住宅のすぐ目の前に立たれていたら気配でわかるはずなんです。

部屋の中で元の飼い主さんたちは一体どう思っていたことでしょう。

やっぱり辛かったのかな。

そうであって欲しいな。

諦めて帰る小さな後ろ姿が忘れられない

夜に仮設住宅の敷地内へ犬連れで勝手に入っていると不審に思われる恐れがあったので、帰ることにしました。

帰りはわたしたち三人とも泣いていました。

マイちゃんは帰りもトコトコとお散歩コースよりもかなり遠い道のりを一生懸命歩いていました。

その小さな姿が切なくて切なくて......。

「被災されて余裕がなくて、マイちゃんを手放さなくてはいけなかったと思おう」

「マイちゃんはきっと沢山可愛がられていたんだ」

「でもこれからはそれ以上にみんなから愛情をもらって、今の生活が楽しいと思えるくらい幸せにしてあげたい」

わたしたちはいろいろ話しながら帰路につきました。

元の飼い主は恐らく『マイちゃんにとっては遠い』と思える公園に置いて帰ったと思います。

そして今住んでいる家から仮設住宅までの道はマイちゃんは歩いたことがないはずなのです。

でもマイちゃんは迷いなく方角を定めて必死に歩いて行ったのです。

犬の帰巣本能の凄さを目の前でしっかりと見せてもらいました。

方向音痴のわたしからしたら、ただただ尊敬でしかありません。

すっかりお姫様になりました

暑い時はいつもフローリングにペチャっと寝ていました

冷たいのが気持ちよくてまどろんでいますね

初めはガリガリで毛にツヤもなく、貧相に見えたシーズーだったのが、みんなに「可愛い、可愛い」と言われながら暮らしていた結果、

「ワタシが1番かわいいのー!!」

とアピールするお姫様気質へと変貌を遂げました。

お散歩中には、向かいから歩いて来るひとから「可愛いわね〜」と言ってもらうと有頂天に喜び、もう一回言ってもらうことを期待して、通り過ぎるそのひとの背中をジーッと見つめるのがお約束。

「また可愛いって言ってもらえたね〜」と声をかけると意気揚々に歩き出す鼻高々な態度!

鼻ぺちゃだけど。

体重は順調に増えて5kgにまでなり、毛もフサフサになりました。

ピンクのお洋服とおリボンがとっても似合う、それはそれは可愛いお姫様となりました。

親バカ炸裂ですね!

虹の橋を渡って行った後も、わたしたちにとってはずっとずっとお姫様です。